どうすればいい
かなしいの とても
でも わからないの どうしていいか
ただ かなしいの とてもとても

不安に胸をせかされて、眠る事もままならず、仰いだ月はとても蒼くて冷たくて。
乱雑に物が置かれて、騒がしいとまで言われた部屋も、今はひっそりと静まり返る。
全てが死んでしまったように。
世界が死んでしまったように。
何も聞こえない、夜の風がかすかに窓を揺らす音以外。
心臓が、どきどきする。
何かが後ろから急き立てる。
もしかしたら、もしかしたら。
するりとベッドから抜け出して、壁つたいに廊下を歩く。
ギシギシと鳴る床の音だけがやけに耳に響いてくる。
ねぇ、あなたはあたしに怒るかな?
入る時はノックくらいしろなんて。
ドアを背中でパタンと閉めて、ゆっくりあなたのベッドに進む。
部屋の中は比べると寂しくて、ただでさえ殺風景な部屋を、蒼い光が拍車をかける。
冷たくて。
寂しくて。
悲しくて。
ベッドの中で寝息を立てるあなたの白い肌も月に染まる。
頬も、唇も、切れ長の瞳の瞼も全て。
蒼白く。
死んだように。

止まらないの、涙が、嫌な考えが。
触れたあなたの頬が冷たくて、瞳からひとしずくまた伝う。
かなしいの、とても。
とまらないの、涙が。
とめられないの、どうしても。

「んぁ……。なに……泣いてんだよ」
うっすら開いた寝ぼけまなこが柔らかく緩み、伸びた手があやすように頭を撫でる。
腕を巻き、ゆっくり引き寄せられた胸が温かい。
トクン、トクンと心音を立て、またとろとろとした眠りに落ちる。
穏やかな寝息、変わらない鼓動、そんな事がただ……ただ愛しくて、いつか失う事が悲しくて……。
神様、神様、一つだけ願ってもいいですか?
ずっと一緒にいられるように……。
永遠の別離が来ぬように。


呟いて 埋めた胸に 涙零れた

 

 

 

 

 


あとがき
ども、霧夕です。no.04月夜、いかがでしたでしょうか?
一度書きあがってみて、これは後書きが無い方が雰囲気的にいいかなぁと思いUPしたのですが
後から後からなんだかまだ製作途中みたいですわりが悪い気がしたので時間を置いてのあとがきUPです。
今回は月夜という事で上記のような物を書いてみたのですがどうでしょう?
本文で書いてはいませんが、一応エンディング後再開ししばらく経った彼らという設定です。
かたや100年も持たない人間の寿命、かたや生粋のエルフでさえも永遠の寿命とされるのに、時として能力がそれらを上回る可能性を持つハーフエルフ…彼女が100年待つ間、命の時間を考えない事は無く、逢ってしまった事により一層不安が増したりするんじゃないかなぁと思います。
そして多分打ち明けられない。
待った時間の違いもあるし、人は日々そんな事考えたりはしないと思うので…彼が彼女の泣く理由に気がつくのは…。
多分きっともっと、もっと先になるんだと思います。

お決まりのセリフですが
ここまでお付き合いいただきありがとうございましたv
(2005・1・31UP)