「チェスター。お前も来いよ。」
「ああ!」
ふうん…チェスターって言うんだこいつ…。
「皆、紹介するよ。僕の親友のチェスターだ。」
それにしても…こうやってクレスと並んでいるからかな…。
じろじろと無遠慮に、それこそ品定めと言っても間違い無いほどにあっちからこっちから見ては、思った事を確認する。
結論は…。
「なんか…弱そう…。」
何でだろうな…あの時はそんな風に思ったのに…。
右手の手首にちらりと視線を走らせる…。

 

「やったか?!」
クレスがそう叫んだと同時にあたし達の足元…今まで何でもなかったその床が大きく音を立てて揺らいだ。
「うわぁっ!!」
「きゃあっ!!」
何が起こったのかはわからない。
でも足元が全部ひっくり返されるような感覚はひどく気持ち悪く、足は震え、もつれそうになる。
「なんなのコレぇっ!」
ふらついた先倒れないように壁に手をつく。
地下墓地のその湿気を含んだようなしっとりと冷たい壁に細かなヒビが走り、手の平には壁のはがれた破片がくっついている。
指先に触れた細かいヒビはあれよあれよという間に天井まで走り、皆の頭に細かい塵と破片を降らせる。
気のせいなんかじゃない!部屋が妙な形に歪み始めている!
「皆!危ない!ここから脱出するぞ!急げ!!」
走り出した足元、後ろから後ろから床に大きなヒビが追う。
隙間からは赤…と言うよりもオレンジに近い光が目を焼き、鼻には特有の異臭がつく。
「こっちだ!!早く!」
クレスが先導する先、どっしりとして重そうに見える巨大な扉が行く先を塞ぎ、クレス達が2人がかりで体当たりをしてもびくともしない。
「どいて!」
こういう時こそあたしの出番!急いでいると言う事もあり手早く右手で印を結ぶ。
「こんな扉ぶち壊しちゃえ!行けぇ!サンダーブレード!!」
バリバリと空気まで電気を通しているんじゃないかと思えるくらい肌が震える。
指先から呼び寄せた落雷は勢いが良すぎるほど派手な音と光を放ち、目の前に軽く人一人分の大穴を開けた。
「さ!早く行こっ!!ペッシャンコなんて勘弁じゃん?」
「ああ!!」
通路を走り抜け勢い良く蹴り破った扉をくぐると異常なまでの熱気に包まれた。
さっき目を焼いた光の正体…それを目前の溶岩地帯が説明する…顔が、熱い。
「な、なにこれ?!溶岩?!!」
驚きで叫ぶあたしなんか気にせずにキョロキョロとミントもあたりに視線を走らせる。
「あ!ありました!!クレスさん!」
何の原理で動いてるのかはわからない。
だけれども今実際に目の前で厚い床板が規則的な動きで向こう側とを橋渡しいている。
時間すら超えたこの体だもん、こんな事くらいで驚いてらんないとは思うものの…そんなのムリじゃん?!
「よし!まだ使えるな!皆急いでこの上に!!」
現代の4人はこの装置の事を知っていたんだろう、なんの疑問も持つことなく狭いその床板の上に乗る。
クラースも乗り込んで…最後に掛けようとしたあたしの足が二の足を踏む、間に…合わない?!
ちょっと恐いけど仕方ない!そう思って箒をギュッと掴む手に走らせた視線、それとは反対の腕が予告無しに掴まれる。
「うひゃあ?!」
「お前死にてぇのか!!早く飛び乗れ!!」
「う…うん!!」
あたしがジャンプすると同時に思いきり力いっぱい引き寄せられる腕…。
がっしりと掴まれたその腕は手袋なんかスポッと抜けちゃうんじゃないかと心配になるほどの力だった。
そんな事しなくても…って、あ…そっか知らないんだよねこの人、あたしが箒ですいすいって事なんか。
…。

「さあ早くこの魔方陣へ!!」
ハッとした。
いや、別に考え事をしていたわけじゃない…ちょっと、一瞬の間戻ってこなかった意識がクレスの声によって呼び戻される。
クラースならこんな魔方陣パッと見ただけでなんの魔法陣かきっと理解出来るんだろう。
あたしにわかるのはそいつが黄色い光を放っている事と、早くこの上に乗らなくちゃ行けないって事。
目の前のあのオレンジの光が一気にまた冷たい壁の色に取って代わって目がチカチカする…。
(ワープ装置だったんだ…。)
さっきと同じような壁の色…さっきと違って見えるのは何でだろう…ここにはあの張り詰めた空気が感じられない…。
それどころかあの目を焼くようなまぶしい光も、肌を焼くようなあの熱さも微塵も感じない…。
もうここはだいぶ地上に近づいていて…普通の地下墓地みたいだった。
激しく揺れる地面だけはついてきていたけど。
「よし!もう少しだ皆!頑張れ!!」
そう言って駆け抜けた入り口、こんな異常な事態なのに目に入った人影。
「おお、モリスン。一体どうしたんじゃこの有様は…っ?!」
「そんな事まずいいですから早くここから逃げましょう!」
話している途中で先導を切る剣士にその手をつかまれて、多分舌を噛んだのだろう…痛そうなそうで無いようなしわくちゃのしかめっ面が風をきる。
(のんきなおじいちゃんね…。っと、こんな事考えてるあたしも同じか…。)
同じくポニーテールも風をきった。

間一髪とはこの事で、地下墓地をなんとか脱出し、なるべく遠くの安全な所へと駆け抜けたあたし達の後ろで何かが激しく音を立てて崩れるのが耳に届いた。
だけれども誰もその方向などは見ていない。
全員が全員、全力疾走して息を切らせてぐったりしている…。
それはあたしも同じ事…でも違うのは、見ている物が地面でも、空でもなくて、自分の片腕、その手首…。
「あ、あの…あたし…!」
(お礼…言わなくちゃ…。)
そう思って、息を整えるのも満足にしないから自然とか細くなってしまうこの声を…クレスはいとも簡単にかき消してしまう。
「皆…大丈夫か?!」
「私は…大丈夫です。」
「俺も。」
「私達も大丈夫だ…。」
その声の後ろからさっきのおじいちゃんの不満を漏らす声が耳に入ったが。
「アーチェは?」
急に名前を呼ばれるもんだから、なんだか妙に声のトーンが高くなる。
「あ…あたしも平気…!」
変にジンとする片手だけを除けば…。
(お礼…言い損ねちゃった…な…。)

 

そう、あの時はああ思ったのに…こうやって見ると、何でだろう…ひどく頼りない…。
あの時は凄く力強く引かれたように思ったんだけど…なんでかなぁ?
「だって、なんだか頼りなさそうなんだもん…。」
本当にあれは気のせいだったのかな…?
そうなのかな?
おかしいな?
勘違いだったのかな…。
でも…、じゃあ…今も残るこの手首のしびれは…?
う〜ん…。
よく…わかんないや…とりあえず、まあ…。
「まあ、せいぜい頑張ってよね、キ・ミ。」
あの時引かれたくらいの強さに。
あの時感じたくらいの力強さに。

新たな旅への始まりだった。



あとがき
どうも、霧夕です。
555hitキリリクで『アーチェが恋に落ちる瞬間』ということで書かせて頂いたこちらの作品いかがでしたでしょうか?
瞬間 が書けているのか自分で少し不安になりますが書いていてとても楽しかったです。
と言うか、実はいつ 落ちた のかがわからなくて(しかも想像できなくて…)昔のデータを引っ張り出してみたらヴォルトのイベントで彼女が「大っっっっ嫌い!!!」発言をしているじゃないですか!
い…いかーん!!ど…どうする自分?!と言った具合にうろたえました。
それはもう激しく(笑)
しかしその後の間が何を意味するのか…と、そっち路線で走らせてみると、こう言ったお話も実はあったんじゃないか…なんて。
どうでしょう?私的には有りです。
あと…楽しかったのでもう少しこう…動きのある描写なんかも勉強したいなぁ、と。

こんなものでよければ555hit踏まれましたコンブ様へ差し上げます!
チェスアー好きと言っていらっしゃったのに甘味のカケラも無いような感じで内心どうか…と思いましたが(汗)
気に入っていただければ幸いです。
煮るなりなんなりお好きにどうぞ☆
それ以外の方は持ち出し禁止となっておりますのでご了承下さい。

それではここまで読んでくださった方たちへ
どうもありがとうございました〜!!
(2004・7・5UP)