「まったく…何でそんなにふらふらになるまで飲むんだよ!」
耳元に、聞き覚えのあるいつもの声。
「あはは、ごっめんねぇ〜♪」
お酒は楽しい
お酒は美味しい
だからお酒は止められない♪
グラスに注がれる白や赤のワイン達、吸い込まれそうに美しい透明感。
銀色のシェーカーから華奢なグラスに注がれる色とりどりのカクテル。
生ビールは始めの一口、グイッといった後の「ぷっはぁー!!」と言うのがたまらない。
それと他に…すずちゃんの里ジャポンには『ニホンシュ』とか『ショーチュー』とか言うものもあるらしい。
こんなにたくさんあるんだもん、どれも飲んでみたくなるのがあたしってもんじゃん?
ごめんねなんて言っているけど反省なんてぜ〜んぜん。
あったり前じゃん?
あたしだもん!

見上げれば…今夜の月は猫の爪。
暗闇に浮かぶ猫の爪。
瞬く星の中央に、一点白く輝いている。
うわ〜と思って見上げていると足がもつれてコケそうになる。
自分の意識とは無関係に、あたしの世界は回っている。
「えっへへ〜、たぁのし〜い♪」
両手を広げてその場でターン、楽しいあたしとは正反対に視界にはしかめっ面がグルンと入る。
「何がたのしー、だ、バカ。何で俺がお前のお守りをしなきゃいけねぇんだよ!」
おやおや、こちらはご立腹?
「まあまあ、そう言わない、言わない。」
大きなため息をつかれ、なおもふらふらするあたしの手…それをクイと引っ張られストンとベンチに座らされる。
「ホラ、ちょっとそこで待ってろ!」
待ってろ?
「え〜?チェスターどっか行っちゃうの〜?」
「いいから待ってろって!」
ちぇ…つまんないの…。

「ふぅ…。」
お酒が入って上がった体温を、通る夜風がさらってゆく…。
こうやって天を仰いでいると、夜空を飾る星々があたしの元に降ってきそう。
あたりには小さな木馬や小さなブランコ、まるで星降る小さなサーカス!
それじゃああたしはピエロだろうか団長だろうか、まあ何でもいいや、とりあえず。
そう考えると楽しくっておかしくって、なんだかクスクス笑えてしまう。
「何一人で笑ってんだよ、気持ち悪ィ。」
さっき去ったと思った声がまたここに帰ってくる。
しかし気持ち悪いとは無礼な奴だ、このサーカスのスターにむかって。
「ホラ、これでもあてて熱冷ませよ。」
ポイと投げられた白いタオルが宙を舞い、ピチャッとあたしの手の中に落ちる。
「あ、ありがと。」
ヒヤンと冷えたタオルを当てると火照った熱が吸い取られて気持ちいい。
トスンと重みであたしの座っているベンチがきしむ。
うまったのは今日一番の特等席。
「つーか、酒くらいたしなむ程度に飲めっての。こんな夜更けにベロベロになって…ちったあ危険意識とか無ぇのかよ。」
ふうん…たしなむ程度ねぇ…。
そんなの全然余裕じゃん?あたし十分たしなんでるし。
ていうか…
「危険意識って?…あんたの事?」
「バッ…バカ、何言ってんだ!!」
お酒なんてあんまり飲んでないはずのチェスターの顔が赤くなる…はて?コイツこんなにお酒弱かったっけ?
「ま、どっちにしてもあんたなんて平気だもんね。」
ピクリ…とあいつのこめかみが動いた事に、あたしはこれっぽっちも気づかなかった。
「あんたなんて全然恐くないし。」
「どうせ好きな子にも手なんてなかなか出せなさそ…ヒャッ?!」
急に、火照る頬に手をあてられて声をあげる。
さっきまでタオルを当てていた所から…こいつの手の平の熱がじんわり伝わってくる…。
「え…?チェス…?」
パラリと額にかかるあたしの髪がのれんの様に手でよけられ…チェスターの顔が間近になる。
「あんまり調子こいてんじゃねぇぞ?…どれだけ…我慢してると思ってんだ…。」
聞き返す間もなく…両腕は優しく捕らえられ、タオルがその手をはなれ土にまみれる。
話そうとするその口を唇で塞がれ、驚きやら恥ずかしいやらで慌てて逃げようとしても…引けば引くほど、逃げれば逃げようとするほどチェスターのその薄い唇は追いかけてきて…そしてあたしは捕まった…。
その甘い唇に…その、息が詰まるほどの甘い罠に…。
「ん…ぅ、…。…ぷはッ…。」
「へっ…、ちったあ酔いは覚めたかよ?」
意地悪な視線でチェスターがあたしを見ている…恥ずかしくてそっちのほうなんか見れてなんかいない…だけどわかる…見られている…。
さっきまで下がっていた頬の赤味が上がってきているのが頬の熱みで伝わってくる。
ううん…さっき以上に頬が、体が、指先までも…沸騰しているように熱く…赤くなっていた…。
「…チェスター…。」
キュッとこいつの裾を掴む…。

「…まだ…ちょっと…酔ってるみたい…。」
恋に、キスに、あんたの熱に…あたしは多分酔っている…。

「…そうか…じゃあ…。」

 

 

…もう一回…

 

 


あとがき
ギャーーッ!!
ど、ど、どうも霧夕です…//
ええと…いつもながら十分恥ずかしいのですが…十二分に恥ずかしいと言うか…なんというか。
何気に酔っ払いの所の『星降る小さなサーカス団』が書いてて楽しかったなぁ、と。
(いや…他も楽しかったけどね?)
こちらは沙月深青様へ相互リンクありがとうの気持ちを込めて書いたものです。
誘い受けチェスさんとかが好みそうだなぁと思いまして…頑張ったのですが…。
なんだか暴走してしまいまして…。
結果…甘!甘ッ!!って言うより…エロッ(殴!
…しかし…誘い受けと言うはずなのに…誘ってるんでしょうかこの場合…(汗
なんだか彼がひどく積極的で攻め攻めですが…まぁ気にしないで下さい!
こんなのでよろしければ沙月深青様へv煮るなり焼くなりお好きにどうぞ〜。
それ以外の方は持ち出し禁止ですのでお願い致しますね!

では!読んで下さりありがとうございました!!
(2004・6・24UP)