こめかみのあたりの生え際から、水滴が顔の輪郭をなぞって落ちた。
空を仰ぐ。なんという青天。
普通であるならば良い天気の言葉のはずが、澄みきる青が憎いほどでアーチェは眩しさ半分、空を睨んだ。
「うぅ……あづいよぉ〜……」
雲がひとつもない空は、わずかな水蒸気すら熱気に飛んでしまった証拠だというように、
ざまあみろと容赦なく肌を焼いた。
肌ももちろん、それだけに留まらず、
紫外線のせいか、細かな砂ぼこりのせいか、
ただでさえ硬い髪質の自分の髪がいつもよりゴワゴワと、軋む。
汗ばむ背中に付かないようにいつもより高めに結んだポニーテールを地面に垂らしながら、
胸を大きく逸らすように後ろ手に手を突っ張った。
反動のように投げ出した脚が冷たい水を受けて心地よい。
「はぁ。ほ〜んと、日陰と水のそばが最高だよねぇ〜。あとはアイスがあれば天国なんだけどなぁ」
だらりと裸足を水に浸けたままちらりと食材店の中を覗き見る。
池の水位より少し高くに作られた橋に腰をかけ、
角のわずかに出来た日陰に腰を下し先程から一角を陣取っていた。
アイスをその口に迎え入れる様に、あ〜んと口を開けていると
ぐぼっと急に何かを押し込まれむせるのと同時に跳ねあがった。
しかし驚いたのもつかの間、口の中の異物感が一転し好ましい物に変化した。
パチ、パチ、と目を大きく瞬かせる。
甘い。そして冷たい。
それを味覚が捉えたとたんに口の奥からじゅわっと唾液が溢れだした。
口の中には皮を剥かれ、縦に割られたパイナップルが串に刺した状態で差し込まれている。
「そんな恰好してると無い胸がよけい無くなるぜ」
ハッと壁伝いに視線を這わせると、
自分と同じ、冷やしたパイナップルを口にしたチェスター・バークライトが
壁に寄りかかるように片足を軸に、そこに立っていた。
じゅるりと音を立てて口に差し込まれたパインを引き抜く。
どこか甘酸っぱさが体中に染みてゆくようであちらこちらがこそばゆい。
「なによ。喧嘩売ってるなら日陰入れたげないんだからね」
にやにやと横に立っているだけなのに、それだけでどこか嬉しいだなんて。
あたしも暑さでどこかやられたに違いない。













あとがき

文章からしばらく離れてた時にリハビリ的に書いた物です。
上がりも下がりもなんも無いですが気にしない。
どこに続く訳でもないSS。 別段季節感も気にしない。
冷やしパイン、美味しいよね。オリーブヴィレッジに似合いそうなので
思うがまま適当に書いてみました。

楽しんでいただけたら幸いですv

(ウェブ拍手返信用ブログより抜粋 2009/9/14 UP)
※ブログにアップされた方は消去しました