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日の下で長いこと過ごしていたせいか、腕が、肩が、それこそ全身が火照ったようで眠れない…。
いや…日に当たったせいなのか…?
それだけじゃあ…ないだろう…?
ベッドの白いシーツの上の冷たい感触を探るのにも飽きて、薄明るく光る壁を伝って台所へと足を運ぶ…。
誰もいないはずのここは水仕事の場だからという事もあり、じっとりとしたぬるい空気が充満している。
冷たい物と言ったら水道の蛇口くらいなもの。
キュッという高い擦れた音に続き…そこと連動した蛇口にはたっぷりと水が汲めるように少し大きめカップがあてがわれている。
もう一度キュッという音で蛇口を締め上げ、もう片方の手に包まれたカップには、なみなみと水が張っているのが月夜の明かりでもハッキリと見て取れるほど、光り、きらめいていた。
ゴクゴクと喉を鳴らせ、そのぬるい水を少しでも体の熱を下げる為に流し込む。
そうやって『火照りを抑える為』にお世辞にも美味いと言えない水をその体に取り込んでいる訳なのだが…だとしたら…俺はその生ぬるい水を飲みながらどうしてさっきから一点を眺め続けているのだろう…?
入った時に、自分が閉めたその扉を…。
さっきまでの自分がそうだったように…『誰か』がこうやって入ってくることを期待でもしているというのか…?
「バカバカしい…。」
都合よく扉が開かれる事など無いだろうに…。
小さく自分を嘲るような言葉を吐いたその瞬間、目の前の扉がギギッという鈍い音を立てる。
「!」
今しがたバカバカしいと言ったはずなのに…否定された自分の事なんかすっかり忘れ、扉に見入る…。
そう…やはり『何か』を期待して…だ。

開く扉の先には何がある?
ゴクリと飲みこむ唾の音が自分の耳にやたら響く…。

ギギ…という音と共にだんだんあらわになる扉の向こう…

そこには何があったのか…それとも何も無かったのか…

蛇口から落ちた水滴がピチャン…という 冷たい音を 立てた…